top of page

貧困削減においては、教育機会は不可欠であり、特に初等教育の完全普及が求められている。1990 年の「万人のための教育(Education for All: EFA)」では、世界会議以降に途上国の初等教育が最優先課題に挙げられた。2000年4月にはタガール会議で基本的人権としての教育を再確認することで、量的な側面とともに質的な側面からの初等教育の推進を図ることが合意された。「タガール行動枠組み」においては初等教育に関して単に初等教育も普及を目指すことだけでなく「より良い質」の教育の必要性が明記された。こうした取り組みの中で、国際社会は資金を投じて学校数や教員等を増加させ、教育機会を提供しようと支援し、その結果、途上国の初等教育の普及率は年々上昇し、学校に通う子どもたちが増加した。

 

しかし、それをもって初等教育の普及が順調に進んでいると考えるのは早計である。十分な学力を身につけ初等教育を修了することが最終的な目標だからである。例えば一つの問題として通学できたとしてもドロップ アウト(中途退学)する子どもが多いことが挙げられる。2011年に世界で小学1年生になった1億3,700万の子どものうち、3,400万人は小学校の最終学年に達する前に学校を離れる可能性が高い。これを反映するのが2000年と同水準の25%という早期退学率である。高い早期退学率の持続は初等教育完全普及の達成の大きな障害である。2010年、サハラ以南アフリカでは、小学校に入学した生徒のうち5人中2人以上が、南アジアでは、3人に1人は最終学年になる前に学校を離れている。

 

なぜドロップアウトが生じてしまうのだろうか。ひとつには家計が脆弱であることが挙げられるだろう。不作や失業、健康問題を契機として所得が急減し結果として学校に行かせることができなくなってしまうということである。しかし問題はこれだけではない。そもそも学校教育の質が必ずしも高くがないという現状がある。 例えば、インドの農村における小学3年生の約4割が単語を読めず、4割が 10以上の数を認識できないという調査があるが、教員が学校にきちんと来ない、来ても教える技術・知識がないといった問題やカリキュラムの問題をはじめとする十分な学力が身につくような質の高い学校教育が実現できていないのである。学校教育の質が低ければ家計は学校に子供を通わせることの重要性を感じず、親は子どもに学校をやめさせやすくなるだろう。

 

そこで本討論会では、学校教育の質について取り上げたい。学校教育の質が低ければ、子どもたちに十分な学力が身につくことはなく、そもそもの初等教育の目標を達成することはできないであろう。その意味で、学校教育の質を高めることは単にドロップアウト率を減少させるというだけでなく、より根本的に初等教育の普及に必要不可欠であるからである。本討論会では学校教育の質の改善がどうすれば達成できるかにについて考えていく。 

第一討論 

第一討論

初等教育の完全普及〜貧困削減に向かって〜

過去ディスカッション

ここでは第36回国際学生シンポジウムで使用したディスカッションテーマを公開しています。

 

bottom of page