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 核兵器は、国際情勢や国際秩序の動向に大きな影響を与える兵器として重要な役割を果たしてきた。核兵器を保有することによって国際政治における影響力を向上させられると考えられたからである。このように核兵器の保持は国益の追求の結果である。よって核の秩序のあり方についてはグローバルな認識が存在し、そのうえで核秩序のための制度を模索したとしても、関係諸国それぞれの固有の利害関係、主要な国家の意思が深く関係している。主権国家同士が協調しなければ、核不拡散のためのグローバルガバナンスの形成は困難である。

 

 核保有国が増加した今、核戦争を起こさないためにも核不拡散はグローバルな問題として取り組まなければならない。核問題を扱う公式な場としての核不拡散条約(NPT)体制は、近年、深刻な緊張状態の下にある。イスラエルやインドは事実上の核兵器保有国だがNPT加盟国であり、北朝鮮はNPTを脱退後核開発の実験を繰り返している。NPTは、非核兵器保有国が核兵器を新たに保有しないことを第一とする。そしてより多くの国々から核不拡散に賛同を得るため、核不拡散の義務に「核兵器国による核軍縮の努力」と「原子力の平和利用における奪い得ない権利の確認と平和利用促進のための国際協力」という二つの価値関係がある。例えば北朝鮮が核を放棄すれば、見返りとして体制の保証と経済支援を一括して行うといったものがある。だが、核不拡散体制の下では、核不拡散義務違反への対応は、最終的にはIAEAおよび国連安保理の決定に委ねられている。そこでの協議は、理事国の利害や思惑に左右され、妥協点が模索されるため、時間を要し、しかも効果的な対応が決定できないケースが少なくない。まさに北朝鮮の核問題については、理事国の米国が核兵器を含む大量破壊兵器の不拡散体制の維持および強化を最優先課題の一つとし、核不拡散体制を揺らがさないためにも北朝鮮が強く希望した二国間協議で妥協し、核問題の解決を図ろうとしたが、北朝鮮のNPT脱退を阻止することができなかった。

 

 所謂ならず者国家が核を保有するのは地域の秩序における優位の獲得といった従来の核をめぐる安全保障概念だけではない。核を保有することで強国への抑止力と主張することで覇権国家との二国間だけの対話に誘導をしたり、国内に国力を誇示することで脆弱な国内政治への引き締めや国民の不満を逸らす目的もある。そしてNPTの内容が対等ではないと解釈し、核兵器を持たないことは国際政治における影響力を更に低下させ、 国家主権の制限につながる措置として強く反対してしまう。そしてならず者国家がテロ組織とつながるテロ組織が現れたなら、容易に製造・運搬可能な放射能兵器を入手し、使用する恐れもある。現に国家同士だけなら、イランと北朝鮮は核開発において技術協力関係がある。国家対国家の構造だけではない非国家が影響力を持つ現代の国際情勢を踏まえれば、今後非国家にまで核兵器の技術がわたる危険性は十分にある。

 

 今回のディスカッションでは、NPT の体制を見直す。核をめぐる国際政治に参加する国々が保障措置、不拡散体制への貢献、核の傘のもとどのように行動するのか、そしてその枠内での国家による制度の変更・逸脱しようとする行動を、北朝鮮のNPT脱退までの過程を用いて分析する。以上を通して核不拡散をめぐって国際秩序をどのように維持していくのか、核をめぐる国際秩序のあり方を議論する。

 

 

第二討論 

核秩序とグローバルガバナンス

第二討論

過去ディスカッション

ここでは第36回国際学生シンポジウムで使用したディスカッションテーマを公開しています。

 

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