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 バブル崩壊以降の日本において、格差、取り分け経済格差の拡大が大きな問題となっている。例えば、厚生労働省が2007年に発表した「平成17年所得再配分調査」を見ると、1981年に当初所得で約0.35であったジニ係数が2005年には0.5263に増加していることが分かる。また、OECDが2005年に発表した「OECD諸国に於ける所得分配と貧困」では、日本の貧困率は15.3%とOECD内第5位の数値であった。つまり、現代日本の経済格差問題についての議論は、近年の実情に即しており、急務である。

 

 また、今回は経済格差に特に影響を及ぼす要素の一つである、雇用格差を取り上げたいと思う。ところで、雇用格差というと「正規雇用」と「非正規雇用」の対比の構図が最も想像しやすいのではないだろうか。事実、2008年以降の派遣切りは非正規雇用者の生活の不安定さを世に知らしめた。

 

 しかし、雇用格差に関してある変化が生じた。解決策として「職務型正社員制度」が提唱されるようになったのだ。「職務型正社員」とは、現在主流の「就社型正社員」の対になる考え方である。非正規雇用労働者が、この職務型正社員を踏み台に就社型正社員へ変化する事が期待されていた。

 

 しかし、結果は予想を大きく外れた。というのも、非正規雇用ではなく就社型正社員野一部が職務型正社員に移行したにとどまったため、非正規雇用労働者は減少しなかったのだ。つまり、非正規雇用・正規雇用の二極対立構造が非正規雇用・職務型正社員・就社型正社員の三極化したということになる。

 

 以上を言い換えると、日本における非正規雇用はそれだけ根強いという事ではないだろうか。つまり、「非正規雇用はなぜ生じるのか」、又は「なぜ減少しないのか」といった問を理解しなければ雇用格差の是正は難しいのではないかと思う。

 

 そこで、今回のディスカッションでは「なぜ非正規雇用が生じるのか」、「なぜ非正規雇用は減少しないのか」に対する回答を導きだす事を目標としたい。またその過程として、「なぜ職務型正社員制度導入で非正規雇用労働者が減少しなかったか」についても議論したいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二討論 

なぜ非正規雇用労働者は減少しないのか

~職務型正社員制度の失敗を通して~

 

第二討論

過去ディスカッション

ここでは第36回国際学生シンポジウムで使用したディスカッションテーマを公開しています。

 

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